実測レポート

電力制限とアンダーボルト(低電圧化)はどっちが効く?【5070 Ti実測】

公開日:2026-09-05 著者:組立テルノ

実機2枚で実測・2026年9月

結論:5070 Tiは電力制限が83%までしか下がらない。本気で絞るならアンダーボルト

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

グラボの電気を減らす方法って「電力制限」と「アンダーボルト」があるんでしょ? どっちをやればいいの? 同じことじゃないの?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

似てるけど別物。電力制限は「使っていい電気の上限を決める」、アンダーボルトは「同じ仕事をもっと低い電圧でやらせる」。結果として電気が減るのは同じでも、効き方が違うんだ。
選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

じゃあ、どっちがどれだけ効くのか数字で見たい!
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

測ってきたよ。RTX 5070 Tiと4070 Tiの2枚を、ゲームベンチで条件を1つずつ変えて。5070 Tiは電力制限が83%までしか下がらないカードだから、その先はアンダーボルトの出番になる。

5070 Ti・電力制限

83%が下限

GPU電力−15%止まり。それ以上は絞れない

5070 Ti・アンダーボルト

875mVで−32%

性能−9%、FF14なら−5%で電力−29%

4070 Ti・電力制限

70%が使いどころ

性能−4%で電力−24%。35%は崖

測定はサブ機(Core i7-14700K/RTX 5070 Ti+RTX 4070 Ti)で、3DMarkのSteel NomadとFF14ベンチ(WQHD・最高品質)を使い、GPUの消費電力は1秒ごとのログから、PC全体の電力はコンセント側のワットモニターから取っています。以前のSDXL画像生成での電力制限実験と同じカードなので、「AI生成で効いた設定がゲームでも効くか」の答え合わせにもなっています。

【前提】「上限を決める」電力制限と、「燃費を良くする」アンダーボルト

電力制限(Power Limit)は、グラボが使っていい電力の上限をパーセントで決める設定です。上限に当たるとグラボは自分でクロックを落として電力に収めます。スライダーを動かすだけなので簡単ですが、どこまで下げられるかはカードごとに決まっていて、今回の5070 Tiがまさにそこで引っかかりました。

アンダーボルトは、「このクロックで動くときの電圧」を標準より低く設定し直すことです。電力は電圧の2乗に効くので、電圧を少し下げるだけで電力は大きく下がります。設定はMSI Afterburnerのカーブエディタで行い、今回は2つのやり方を試しました。

MSI Afterburnerのカーブエディタ。875mVの点を2500MHzまで持ち上げ、右側を水平にした形
【持ち上げ方式】875mVの点を2500MHzまで引き上げ、その右側を水平に。標準では875mVで約2280MHzなので、「同じ電圧でより高いクロック」=電圧を下げてクロックを保つ設定です。
MSI Afterburnerのカーブエディタ。850mVの点から右側を2175MHzで水平にした形
【固定点方式】標準カーブ上の850mV(約2175MHz)から右を水平に。クロックは持ち上げず、「ここより上の電圧を使わせない」設定。SDXL実験で使ったのはこちらです。
選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

図で見ると分かりやすい。持ち上げ方式は「低い電圧のまま高いクロックで動かす」、固定点方式は「この電圧より上は使わせない」ってことね。
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

そのとおり。持ち上げ方式は性能を保ちやすいけど、どこまで持ち上げても動くかは個体次第。固定点方式は確実に電力が下がるけど、クロックも下がるから性能も落ちる。この違いが、後の表にそのまま出てくるよ。

【実測①】5070 Tiの電力制限は「83%」が壁だった

SDXL生成の電力制限実験でも触れたとおり、Afterburnerで5070 Ti(INNO3D X3 OC WHITE)のPower Limitを下げていくと、スライダーが83%(250W)で止まって、それ以上は動きません。これはカードのVBIOS(グラボ側の設定)で決まっている下限で、ソフトからは変えられません。ゲームでも同じ壁に当たります。

MSI AfterburnerでRTX 5070 TiのPower Limitスライダーが83%の左端で止まっている画面
Power Limit(%)のスライダーが左端で83。nvidia-smiで確認しても下限250W・既定300Wでした。

その83%で測ると、Steel Nomadのスコアは−4.2%、GPUの平均電力は−15.4%(295W→250W)。効いてはいますが、これが電力制限だけで到達できる下限です。同じ手持ちの4070 Tiは35%(100W)まで下げられるので、「電力制限でどこまで絞れるか」はカードによってまったく違います。

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

えっ、じゃあ5070 Tiを買った人は「電力制限で半分に」みたいな記事を読んでも再現できないの?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

少なくともこの個体ではできない。だからこそ次のアンダーボルトが本命になる。電圧の設定には電力制限のような下限の壁がないからね。

【実測②】5070 Tiのアンダーボルト早見表

持ち上げ方式を975mVから25mV刻みで875mVまで、固定点方式を925mVと850mVで測りました。4段階すべてクラッシュや画面の乱れなしで完走しています。表の緑の行が、私が推す2つの設定です。

RTX 5070 Ti・Steel Nomad(定格は2回の中点、他は各1回。2回目の再現差は0.2%以内)
設定スコアGPU平均性能GPU電力最高温度
定格(PL100%)6,570.5295W
基準
基準
69℃
電力制限 83%(この個体の下限)6,294250W
−4.2%
−15.4%
63℃
持ち上げ 975mV/2805MHz(実電圧は一時1.000V)6,456264W
−1.7%
−10.7%
66℃
持ち上げ 925mV/2700MHz6,364237W
−3.1%
−19.9%
61℃
持ち上げ 900mV/2600MHz6,278226W
−4.5%
−23.7%
59℃
持ち上げ 875mV/2500MHz5,995201W
−8.8%
−32.1%
56℃
固定点 925mV/2490MHz(PL83%)6,064217W
−7.7%
−26.6%
59℃
固定点 850mV/2175MHz(PL83%)5,335166W
−18.8%
−43.9%
51℃

一番使いやすいと思ったのは875mV/2500MHzです。性能は−8.8%ですが、GPUの平均電力は−32.1%(295W→201W)、最高温度は69℃から56℃まで下がりました。電力制限では届かなかった領域に、電圧の設定だけで入れています。「性能をあまり落としたくない」なら900mV/2600MHzで、−4.5%の性能で電力−23.7%。電力制限83%(−4.2%/−15.4%)とほぼ同じ性能で、電力は8ポイント多く削れました。

固定点方式の850mV(SDXL記事で「普段使い」に推した設定)は、電力−43.9%と一番効く代わりに性能が−18.8%。AI画像生成では待ち時間が2割延びるだけでしたが、ゲームではfpsが2割落ちる設定なので、用途で使い分ける必要があります。

3DMark Steel Nomadの結果。RTX 5070 Ti定格でスコア6572
定格: Steel Nomad 6,572(65.72fps)。
3DMark Steel Nomadの結果。RTX 5070 Ti 875mV設定でスコア5995
875mV/2500MHz: 5,995(59.96fps)。この−8.8%で、GPU電力は−32%。

設定した電圧どおりに動くとは限りません

975mVに設定した回では、監視ソフト(HWMonitor)が一時的に1.000Vを記録しました。カーブを水平にしても、グラボは同じクロックの少し右側の点を選ぶことがあるためです。900mVでも実測は最大0.910V、875mVは0.890Vでした。だからこの記事では「875mV固定」とは書かず、設定値と実測の最大値を分けて載せています。自分で試すときも、設定画面だけでなく負荷中の実電圧を見てください。

HWMonitorのRTX 5070 Ti表示。GPU電圧の最大0.890V、Hot Spot最大63.2℃、GPU電力最大210.51W
875mV設定でSteel Nomadを回した後のHWMonitor。GPU電圧の最大は0.890V、Hot Spotの最大は63.2℃、GPU電力の最大は210.5Wでした。
選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

電圧を100mVちょっと下げただけで、電力が3割も減るんだ…。温度も13℃下がってるし。
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

電力は電圧の2乗で効くから、電圧の1割減が電力の2割減くらいに化ける。しかもクロックを2500MHz確保してるから性能の落ち方が緩い。これが「電力制限より効く」理由だよ。

【実測③】4070 Tiは電力制限の階段がきれいに見える

4070 Ti(PNY VERTO)は電力制限を35%(100W)まで下げられるので、こちらで「電力制限を段階的に下げると何が起きるか」を見ます。なおこのカードは下段スロットのx4接続なので、5070 Tiとの絶対比較はせず、同じカード内の変化率だけを見てください。

RTX 4070 Ti・Steel Nomad(各1回・PCIe x4接続)
設定スコアGPU平均性能GPU電力最高温度
定格(PL100%・285W)4,676262W
基準
基準
72℃
電力制限 85%(242W)4,589240W
−1.9%
−8.4%
71℃
電力制限 70%(200W)4,481199W
−4.2%
−24.3%
65℃
電力制限 55%(157W)4,105156W
−12.2%
−40.5%
58℃
電力制限 35%(100W・下限)(性能が崖のように落ちる)2,431100W
−48.0%
−62.0%
47℃

70%までは性能の落ち方が緩く(−4.2%)、電力は−24.3%。55%で性能−12.2%/電力−40.5%。そして35%まで下げると性能が−48%と一気に崖になります。電力は−62%ですが、半分の性能で使うくらいなら55〜70%で止めた方が「電力あたりの仕事」は多い。SDXL実験で「50%より下は効率が悪化する」と出たのと同じ形が、ゲームでも出ました。

もうひとつ、思わぬ発見がありました。定格付近で回すと、このカードのHot Spot温度(チップ内で一番熱い点)が105℃台に達していて、表示上のGPU温度(72℃)との差が30℃以上ありました。電力制限70%で92℃、55%で81℃まで下がったので、当面は電力制限をかけて使いつつ、クーラーの密着やグリスの点検候補にしています。

HWMonitorのRTX 4070 Ti表示。GPU温度最大71.5℃に対しHot Spot最大105.6℃が赤字で表示
電力制限85%でSteel Nomadを回した後のHWMonitor。GPU温度の最大71.5℃に対して、Hot Spotの最大は105.6℃(赤字)。
選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

105℃!? それ大丈夫なの?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

すぐ壊れる温度ではないけど、健康な状態とも言えない。中古で買ったカードや使い込んだカードは、こういう「表示温度は普通なのにHot Spotだけ高い」ことがある。電力制限やアンダーボルトは、こういうカードを延命する道具にもなるんだ。測って初めて分かったことだね。

【FF14】実際のゲームベンチではどれだけ違う?

Steel Nomadは「GPUを使い切り続ける」重いベンチです。もっと普通のゲームに近いFF14ベンチ(WQHD・最高品質・FSR)でも、代表設定を測りました。

GPU・設定スコア平均fpsGPU平均スコア変化GPU電力
5070 Ti 定格23,962170.7224W
基準
基準
5070 Ti 875mV/2500MHz22,844161.4159W
−4.7%
−29.2%
4070 Ti 定格18,353130.1191W
基準
基準
4070 Ti 電力制限55%17,838126.1153W
−2.8%
−19.8%

どちらもSteel Nomadより性能の落ち幅が小さく、電力の削減幅は大きいままでした。5070 Tiの875mVはスコア−4.7%(170.7→161.4fps)で電力−29.2%、4070 Tiの55%はスコア−2.8%で電力−19.8%。ゲームはGPUを常に使い切るわけではないので、電圧や上限を絞っても、余裕のある場面では影響が出ないためです。実ゲームの体感は、重いベンチの数字より甘めに出ると考えていいと思います。

【電気代】コンセント側ではいくら変わる?

GPU単体の数字だけでなく、PC全体としてコンセントから何W引いているかも、ワットモニターで読みました。表の値は「ならし(安定している値)/瞬間最大」で、電気代は31円/kWhでならしから計算しています。

状態(Steel Nomad中)ならし/瞬間最大1時間あたり1日2時間×30日
アイドル(何もしていない)約118W約3.6円約218円
5070 Ti 定格520W/541W約16.1円約967円
5070 Ti 電力制限83%465W/480W約14.4円約865円
5070 Ti 875mV/2500MHz415W/436W約12.9円約772円
5070 Ti 固定点850mV373W/391W約11.6円約694円
4070 Ti 電力制限35%265W/281W約8.2円約493円

5070 Tiを定格から875mVにすると、コンセント側で約105W減。1日2時間のゲームなら月に約200円の差です。正直、電気代だけを目当てにやる設定ではありません。それより効くのは温度(−13℃)と静かさ、電源の余裕で、うちのように2枚挿しで電源容量がギリギリの構成ほどメリットが大きくなります。電気代の計算の仕方そのものはゲーミングPCの電気代記事にまとめています。

【手順】自分でやるときの流れと、つまずいた3点

電力制限(まずはこれ)

  1. 1. MSI Afterburnerで対象のGPUを選ぶ(2枚挿しなら要注意)
  2. 2. Power Limitのスライダーを下げてApply
  3. 3. 下限で止まったら、それがそのカードの限界

アンダーボルト(持ち上げ方式)

  1. 1. Ctrl+Fでカーブエディタを開く
  2. 2. 目標電圧の点を目標クロックまでドラッグし、右側を水平にしてApply
  3. 3. ベンチを3回+ゲームを30分回し、落ちなければ採用。落ちたら25mV戻す
  4. 4. 安定するまでWindows起動時の自動適用はオフのまま

今回の測定で実際に起きた失敗を3つ。どれも「設定画面を見ただけでは気づけない」ものでした。

① 保存したプロファイルが別物だった

以前のSDXL実験のプロファイルを呼び出したつもりが、中身は別の設定で、負荷中のクロックが目標より300MHz低いまま1回測ってしまいました。以降はプロファイルを使わず、毎回リセットして手で設定し、負荷中の実クロックで確認しています。

② ベンチが違うGPUで動いていた

5070 Tiのつもりで回したSteel Nomadが4070 Tiで動いていました。3DMarkのGPU選択を見落としたためで、1秒ログの使用率で発覚。2枚挿しの人は、結果画面のGPU名と負荷中の使用率の両方を見てください。

③ 解像度の設定が確定していなかった

FF14ベンチで設定画面ではWQHDを選んでいたのに、OKを押す前の値(フルHD)で1回走っていました。結果画面の解像度表示を確認する癖が要ります。

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

3つとも「ちゃんと設定したつもり」で起きてるのが怖い…。
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

だから「設定した」じゃなくて「動いている状態を測る」が基本。負荷中の実電圧・実クロック・使用GPU・結果画面の解像度、この4つを見れば全部防げるよ。

FAQ

よくある質問

アンダーボルトってグラボが壊れたりしない?

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

Q1

アンダーボルトってグラボが壊れたりしない?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

電圧を「下げる」方向なので、発熱も電流も減る側です。壊れる心配より、下げすぎて画面が乱れたりベンチが落ちたりする「不安定」が問題で、そうなったら1段戻せば済みます。今回は875mVまで4段階すべて完走しましたが、これはうちの個体の話。同じ型番でも当たり外れがあるので、自分のカードで必ず安定確認してください。

電力制限とアンダーボルトを両方かけたらもっと下がる?

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

Q2

電力制限とアンダーボルトを両方かけたらもっと下がる?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

理屈のうえでは組み合わせられますが、今回は測っていないので数字は書けません。5070 Tiの場合、875mVの時点でGPU平均が約200Wと、電力制限の下限250Wをすでに下回っているので、制限をかけても上限に当たらず効かない可能性が高いです。試すなら次の実験ネタです。

ゲームのfpsは実際どれくらい下がるの?

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

Q3

ゲームのfpsは実際どれくらい下がるの?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

FF14のベンチ(WQHD・最高品質)だと、5070 Tiは定格の平均170.7fpsが875mVで161.4fpsでした。差は約9fpsで、スコアにすると−4.7%。同じ設定でGPU電力は−29%です。Steel Nomadより差が小さいのは、FF14の方がGPUを常に使い切る場面が少なく、電圧の影響が出にくいからだと考えています。

Hot Spot温度って何?105℃は大丈夫?

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

Q4

Hot Spot温度って何?105℃は大丈夫?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

GPUチップの中で一番熱い1点の温度です。表示上のGPU温度(今回の4070 Tiは72℃前後)より30℃以上高い105℃台が出たので、うちの4070 Tiはクーラーの密着が弱くなっている可能性があります。すぐ壊れる値ではありませんが、電力制限70%で92℃、55%で81℃まで下がったので、当面は電力制限をかけて使いつつ、保証条件を確認したうえでグリスやサーマルパッドの点検候補にしています。

測定は2026年9月4〜5日、室温26.5℃、NVIDIAドライバー610.88、Windows 11で実施。GPUの電力・クロック・温度はnvidia-smiの1秒ログ(Steel NomadはGPU使用率90%以上の区間、FF14は使用率50%以上の連続区間)から集計し、コンセント側はサンワサプライのワットモニターの目視値です。数値はすべて筆者の個体のもので、同じ型番でも結果は変わります。電圧の設定変更は自己責任で、保証条件もご確認ください。運営方針は運営者情報をご覧ください。