実測レポート

FreeTokenは本当に速い?【128GBと2GPUの実測でわかった境界線】

公開日:2026-08-25 著者:組立テルノ

128GBメモリ+GPU2枚の実機で検証・2026年8月

結論:VRAMに載るモデルはllama.cpp系が速い。載らないモデルはFreeTokenが約4倍速い

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

Xで「FreeToken」ってすごく話題になってるよね。VRAMが足りなくても大きいAIモデルが動くって本当なの?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

本当。ただし「いつでも速い」わけじゃなかった。うちの128GBメモリ+GPU2枚で3日間測り込んだら、勝ち負けの境界線がはっきり見えたよ。
選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

境界線? 速いか遅いかじゃなくて、条件で勝者が入れ替わるってこと?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

そう。境界線は「VRAMにモデルが載るかどうか」。今日は全部実測の数字で見せるね。測定は固定プロンプト2種×3回の中央値、条件も全部書くよ。

FreeTokenはUC Berkeley発のMoE(Mixture-of-Experts)モデル専用の推論エンジンです。MoEモデルは中身が多数の「専門家(Expert)」に分かれていて、1回の応答で使うのはその一部だけ。FreeTokenはよく使うExpertだけをVRAMに置き、残りをメインメモリに逃がすことで、VRAMに収まらない大型モデルを実用速度で動かします。つまり「メインメモリの容量」がそのまま戦闘力になる仕組みで、128GB積んでいるうちのメイン機はまさに検証向きです。

CPU / メモリRyzen 9 9950X / DDR5 128GB(32GB×4、3600MT/s動作)
GPURTX 5080 16GB + RTX 4080 SUPER 16GB(ともにPCIe x8動作)
ソフトFreeToken Desktop v0.2.0-beta.14(エンジン0.1.1) / 比較: LM Studio(llama.cpp CUDA12 v2.13.0)
ドライバー / OSGeForce 596.36 / Windows 11 25H2
測定方法固定プロンプト2種×3回の中央値。速度は「ならし(平均)」tok/s。原則GPUは定格Power Limit

【実測①】モデルの階段——128GBで、どこまで登れるか

モデル生成速度(ならし)メインメモリ使用判定
Qwen3.6-35B-A3B(35B級)95〜104 tok/s約41GiB(+21GiB)快適。応答開始も約1.5秒
gpt-oss-120b(120B級)20〜26.5 tok/s約82GiB実用ライン。読む速さと同等以上
DeepSeek-V4-Flash(284B級)必要145.3GiB128GBでも不可(あと20GiB不足)

速度は短文/長文プロンプト各3回の中央値。35B級はNVFP4、120B級はMXFP4(4bit級量子化)。

まず単体の実力から。35B級は約100 tok/sで、体感は「一瞬で書き終わる」速さ。120B級でも20 tok/s台と、人が読む速度を上回ります。そしてこの120B級こそが「128GBが人権ライン」と言われる理由でした。メインメモリを82GiB使うため、64GB機では起動すらできません。

一方で284B級はアプリの公式判定で「Insufficient RAM」。128GBでも、あと20GiB足りません。「メモリはあればあるだけ強い」を、これほど具体的な数字で突きつけられるソフトは初めてです。

なお速度は容量だけでなくメモリの帯域(速さ)にも依存します。うちは4枚挿しのため3600MT/s動作(付属の帯域テストで実測44.5GB/s)で、X上のDDR5-128GB構成の報告(120B級で30 tok/s、GPU不明)よりやや遅いのは、このハンデ込みで妥当な位置と見ています。高クロックの2枚構成なら、もう少し伸びる余地があるはずです。

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

120B級でメモリ82GiBって…私の32GBのパソコンだとどうなるの?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

起動すらできない。64GBでも足りなくて、96GBでようやくギリギリ。Xで「128GBが人権ライン」って言われてるのは冗談じゃなくて、この表がその正体なんだ。
gpt-oss-120b生成中のタスクマネージャー。メモリ80/126GB使用
120B級モデルの生成中。メインメモリ80GiB超・GPU使用率98%。128GB構成が初めて『使い切れる』場面です。
FreeTokenのモデル一覧。モデルごとにInsufficient RAMやFits in RAMの判定バッジが表示されている
モデル一覧にはPC構成に応じた判定バッジが出ます(dense型27Bは128GB機でも「Insufficient RAM」、47GiBのMoEは「Fits in RAM」)。この判定で284B級のDeepSeek-V4-Flash(必要145.3GiB)は不可と表示されました。
選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

128GB積んでても「足りません」って言われるモデルがあるの!?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

上には上がいるんだ。でも今のローカルLLMの主戦場は120B級で、そこには128GBで立てる。「どの規模で戦うか」を決めてからメモリを積むのが正解だよ。

【実測②】LM Studio(llama.cpp)との対決——境界線はVRAMの壁

対決条件FreeTokenLM Studio勝者
35B級(VRAM32GBに全量載る)104 tok/s(1GPU)150〜157 tok/s(2GPU分割)LM Studio 1.5倍
35B級・1GPUどうしに統制104 tok/s22.4 tok/sFreeToken 4.6倍
120B級(VRAMに載らない)24〜26.5 tok/s6.5 tok/s(2GPU+RAM分割)FreeToken 約4倍
120B級・8千字文書の要約(実用形式)24.2 tok/s・初回18.9秒10.7 tok/s・初回34.0秒FreeToken 2.3倍

量子化は4bit級どうし(Q4_K_M vs NVFP4/MXFP4)だが完全同一ではない。llama.cpp側のMoE CPUオフロード追い込み設定はLM StudioのCLIから指定できず未実施(GUIでの追試余地あり)。

X上で「llama.cppより2倍速い」「いや、うちのllama.cppのほうが速い」と議論になっていましたが、両方とも正しいというのが実測の答えです。VRAM32GB(16GB×2枚)に丸ごと載る35B級では、全部をGPUで回せるLM Studioが1.5倍速い。VRAMに載らない120B級では、FreeTokenが約4倍速い。

ただし35B級の敗因は「2枚目のGPU」でした。1GPUどうしに条件を揃えるとFreeTokenが4.6倍速い——エンジン性能そのものはFreeTokenが上で、LM Studioの150 tok/sは2枚目のGPUによる勝利です。まとめるとこうなります:16GB1枚ならFreeToken、VRAM合計に載る規模ならllama.cpp系、載らない規模なら常にFreeToken

おまけの実用差として、FreeTokenはコンテキスト長262,144が既定で、8千字の文書もそのまま投げられました。LM Studioは既定4096のままだと即エラーになり、設定変更と再ロードが必要です(初心者がつまずくポイント)。

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

えっ、じゃあXで「速い」「いや遅い」って議論してた人たち、どっちも本当のことを言ってたんだ…
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

そう。自分のVRAMにモデルが載るかどうかで答えが反転する。だからベンチの数字は「どの環境で測ったか」とセットじゃないと意味がないんだよ。

【発見】RTX 5080がRTX 4080 SUPERより3割遅い

今回いちばん予想外だったのがこれです。同一モデル・同一設定・定格Power Limitで、新しいRTX 5080(70〜74 tok/s)が、RTX 4080 SUPER(95〜104 tok/s)より約3割遅いという世代逆転が起きました。

原因の切り分けもしました。生成中のクロックは5080がフルブースト(2872MHz)、温度47℃、スロットリング全項目なし、それでも遅い。つまり熱・電力・クロックはすべてシロ。残る容疑はFreeTokenのNVFP4カーネルがBlackwell世代(SM120)に未最適化であること。5080だけ初回の応答に49秒かかる(コンパイルが走る挙動)ことも傍証です。50シリーズで試して「思ったより遅い」と感じた人は、カードではなくソフトの成熟待ちの可能性が高いです。

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

新しくて高い5080が負けるなんて…50シリーズを買った人はショックじゃない?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

カードが悪いわけじゃないから安心して。カード自体はフルスピードで回っていて、ソフト側の最適化が追いつけば本来の力が出るはず。出たばかりのソフトを新しい世代のGPUで使うときは、こういう時期があるってことだね。

【運用】測って分かった、知らないとハマる4つ

① `ft bench bw`(帯域測定コマンド)は使い分けが必要。実行すると設定が自動で「hybrid」化され、120B級は+20%速くなる一方、35B級は半減しました(104→57 tok/s)。大型モデル常用なら実行、35B級常用なら実行しない(または設定でoffloadを明示)が正解です。

② 同時利用に弱い。120B級で2並列にすると各8.3 tok/s、合算16.6と、1人のとき(20.2)より合計まで下がりました。1人で使う道具です。

③ マルチGPUは現状非対応。2枚挿していても使うのは常に1枚(うちでは自動で4080 SUPER側)。どちらを使うかの指定は可能ですが、番号指定は罠が多く、GPUのUUID指定が確実でした。

④ Power Limit 50%でも速度が落ちない。4080 SUPERをPL50%(160W)に絞っても35B級は104 tok/sのまま——定格(190W前後)と同速度を約2割少ないGPU電力で出せました。MoEオフロード動作はGPU電力律速ではない証拠で、電気代の記事で書いた「絞って回す」運用がここでも有効です。

※壁コンセントの消費電力・電気代の実測は現在測定中で、結果が出しだいこの記事に追記します(未測定の数字は書かない方針のため)。

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

…罠、多くない? 私が一人で使ってたら絶対ハマってた自信がある。
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

ベータ版だからね。でも罠は場所さえ分かっていれば避けられる。それを先に踏んで地図にしておくのが、この記事の仕事だよ。

まとめ——誰が試すべきか

向いている人

  • ・メインメモリ64GB以上を積んでいる(128GBなら120B級が快適圏)
  • ・VRAM16GB以下のGPU1枚で大きいモデルを動かしたい
  • ・1人でローカルLLMを使う(コーディング支援・文書処理など)

まだ向かない人

  • ・VRAM合計にモデルが載る構成の人(llama.cpp系が速い)
  • ・複数人で同時に使うサーバー用途
  • ・dense型モデルや画像入力(マルチモーダル)を使いたい人

「GPUを買い足す前に、メモリを盛る」という新しい選択肢が現実になりました。いまはメモリ高騰のさなかですが、メモリ容量の記事で書いた「用途が容量を決める」の最新の実例として、ローカルLLMは128GBを正当化する数少ない用途です。

Crucial Pro DDR5-5600 64GBキットの商品画像

うちの128GBはこれ×2セット

Crucial Pro DDR5-5600 64GB(32GB×2)

CP2K32G56C46U5 / 4枚挿しで128GB(3600MT/s動作)

楽天参考価格:¥109,800(毎日の価格取得で自動更新)

購入リンクにはアフィリエイト広告が含まれます。価格と在庫は必ずリンク先の最新情報をご確認ください。4枚挿しはクロックが下がる点に注意(下の関連記事参照)。

FAQ

よくある質問

メインメモリは何GBあればいい?

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

Q1

メインメモリは何GBあればいい?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

動かしたいモデルの規模で決まります。うちの実測では、35B級で約41GiB、120B級で約82GiB使用しました。つまり32GB機では35B級も苦しく、64GB機でも120B級は不可。96GBでギリギリ、128GBなら120B級を20GiB残して快適に回せます。X(旧Twitter)で「128GBが人権ライン」と言われているのは、この120B級が実用ラインになるからだと実測して納得しました。

MoEじゃない普通のモデル(dense)も速くなる?

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

Q2

MoEじゃない普通のモデル(dense)も速くなる?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

なりません。FreeTokenはMoE(Mixture-of-Experts)専用の仕組みで、「使うExpertだけVRAMに置き、残りをメインメモリに逃がす」ことで速度を出しています。アプリのモデル一覧でも、dense型のQwen3.6-27Bは128GB機でも赤バッジ(実行不可判定)でした。マルチモーダル(画像入力)にも現状未対応です。

RTX 5090なら爆速なの?

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

Q3

RTX 5090なら爆速なの?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

X上ではRTX 5090+gpt-oss-120bで約130 tok/sという報告があります(うちでは未検証・引用です)。ただし本文のとおり、うちの実測ではRTX 5080がRTX 4080 SUPERより約3割遅いという逆転が起きました。Blackwell世代はカーネル最適化がまだ途上の可能性があるので、50シリーズの数字は「伸びしろ込み」で見るのが安全だと思います。

家族や友達と同時に使うサーバーにできる?

選部マヨ子(初心者)

選部マヨ子

Q4

家族や友達と同時に使うサーバーにできる?
組立テルノ(専門家)

組立テルノ

今は勧めないな。120B級で2人同時に使う実測をしたら、1人あたり8.3 tok/sまで落ちて、合計でも16.6 tok/sと1人のとき(20.2)より遅くなったんだ。VRAMに載せたExpertの使い回し(キャッシュ)が同時利用で効かなくなるのが原因と見てる。FreeTokenは「1人で大きいモデルを回す」道具と割り切るのが今は正解だよ。

本記事は筆者所有機での実測にもとづきます(測定条件は本文と各表の注記のとおり)。FreeTokenはベータ版のため、バージョンにより結果は変わりえます。他環境の数値として引用したもの(RTX 5090の報告等)は筆者未検証です。運営方針は運営者情報をご覧ください。